TOP > 領域概要(公募研究 H21-22年度向け)

公募研究

ソフトマターとは高分子、液晶、両親媒性分子、コロイド、生体物質などの物質群に対する総称である。これらに共通の性質は分子の自己集合によってメソスコピックな内部構造が発現することである。この構造形成のメカニズムを解明しダイナミクスを理解することは、21世紀の基礎科学の重要な研究課題であり、産業への多大な波及効果が期待できる。

本領域は、ソフトマター物理学と非平衡物理学の融合的研究により、さまざまな外場存在下におけるソフトマターの構造形成と非平衡状態を解明することを目的としている。具体的にはメソスコピック構造の制御を目指した、実験・理論・計算機シミュレーションによる構造とダイナミクスの基礎的研究を行っている。

以下に掲げる研究項目について、「計画研究」により重点的に研究を遂行すると同時に、これらに関連する分野も含めた研究の一層の推進をはかるため、一人又は少数の研究者による2年間の研究を公募する。1年間の研究は公募の対象としない。非平衡ソフトマターの物理学的、化学的、生物学的、工学的視点からの研究、非平衡基礎論や非線形ダイナミクスと関係した研究及び階層性をもつ系の新しい計算機シミュレーション手法による研究などを遂行する研究者、特に若手研究者の応募を歓迎する。

公募研究の単年度当たりの応募金額は、実験的研究では500万円を上限とし、理論的研究では250万円を上限とする。採択目安件数は実験的研究で概ね16件程度、理論的研究で概ね8件程度を予定している。

※「研究計画調書」は必ず2年間の計画で記載すること。また、平成21年度秋には(平成22年度開始の)新規の公募はしない。

項目研究A01:分子凝集構造のダイナミクス

高分子凝集系では、分子ダイナミクスと構造形成のダイナミクスが強くカップリングされた状態にあり、弱い拘束や外場に対しても特徴的な構造が形成される。本項目研究では、主として高分子ブレンド系、ブロック共重合体系、高分子ゲル系、液晶系を主対象に、このカップリングの詳細や、構造形成とそれに伴う物性変化を明らかにする実験および理論研究の提案を公募する。

項目研究A02:構造転移のダイナミクス

ソフトマターが形成する秩序メソ構造が外部から摂動をうけると、平衡状態では予想もできないようなドラスティックな構造相転移を示す。本項目研究では、様々な外場と結合することによって生まれる新奇な構造形成を明らかにすることを目的とする。外場としては、ずり流動場、電場、磁場、光場の他、ゲスト成分の添加等のソフトマター複合系も対象とする。これらの系における非平衡メソ構造形成ダイナミクスの解明とそのメソ構造制御や生体系への展開など、新しい視点での研究を実験・理論・シミュレーションを問わず公募する。

項目研究A03:非平衡構造のダイナミクス

広い意味でのソフトマターの非線形応答や非平衡条件下における時空構造形成プロセスを対象とする研究を公募する。粘弾性・粘塑性・流動化ダイナミクス、凝着・接着、はく離、破壊、相変化、結晶化などの現象や、化学反応系、さらには生体分子を含むアクティブソフトマターなどが研究の対象となる。これらの発展を促すとともに、平衡から遠く離れた系に関する非平衡基礎論や非線形動力学を機軸としてこの種の課題を大きく進展させようとする研究も歓迎する。

項目研究A04:理論・モデリング

本特定領域のこれまでの2年間の活動により、ソフトマターのミクロからマクロにわたる種々の階層でのモデル化が行われてきた。具体的には、イオン性液体、高分子溶液やからみ合い高分子系、コロイド・液晶・界面活性剤系などに関して、分子シミュレーションや密度汎関数理論などの手法が開発されてきた。このような個別の系の特徴をとらえた手法の蓄積とともに、幅広い階層をつなぐ方法論の構築も重要な課題である。本特定領域の後期の2年間では、前半ではカバー出来なかった系あるいは手法のさらなる発展を目指すだけでなく、階層をまたいだ方法論の開発を積極的に推し進めたい。