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A03:非平衡構造のダイナミクス

[ 計画研究 ]

やわらかく小さなシステムの構造変化と非平衡ダイナミクス
[ 研究代表者 ] [ 研究分担者 ] [ 連携研究者 ]
佐野雅己
東京大学
大学院理学系研究科
教授
村山能宏
東京農工大学
工学部物理システム工学科
准教授
原田崇広
東京大学
大学院理学系研究科
講師

研究内容

やわらかで小さなシステムの非線形応答やゆらぎが今、統計力学の重要な問題となっている。やわらかく小さいことは、kT程度の熱ゆらぎが構造変化に際して無視できないことを意味し、非平衡過程においては負のエントロピー生成も確率的に生成する。近年、外力や電場、化学反応などにより非平衡状態に置かれた小さなシステムが示すゆらぎと構造変化に関する法則の存在が示唆され、非平衡統計力学は新たな展開の時期を迎えている。このようにやわらかく小さな系の例として、特にDNAやRNA、タンパク質などの生体高分子や脂質膜などがあげられる。これらの巨大分子は他の高分子に比べ、巨大であるため外部操作や可視化が容易であるという特徴を持っている。本研究では、生体高分子や脂質がおりなす様々の構造とそれらが外場の下で示す非平衡ダイナミクスを測定し、非平衡ゆらぎと非線形動力学を機軸として体系的な理解をめざす。具体的には、DNAやアクチンなどの荷電高分子の凝縮・非凝縮転移、ベシクル(両親媒性の二分子膜の作る球状構造)とその外場による変形と分岐、さらにアクチン重合によるベシクルの変形と輸送などの現象を、マルチビーム・レーザーピンセットやAFM、マイクロファブリケーション技術を用いて測定・制御し、ミクロ系における構造形成メカニズムと非平衡ゆらぎの効果を定量的に明らかにする。

【成果報告書】 最終  平成21年度  平成20年度  平成19年度  平成18年度

二次元液晶における分子ダイナミクスの時空間変換の解明
[ 研究代表者 ] [ 研究分担者 ]
多辺由佳
早稲田大学
理工学術院
教授
米谷 慎
産業技術総合研究所
ナノテクノロジー研究部門
グループリーダー

研究内容

ソフトマターに熱平衡状態で自発的に生じる特徴的な高次構造が最近注目されているが、その一方で、個々の分子の「運動」とマクロな系の「非平衡」構造の関係に着目した研究はあまり多くない。生物の活動からもわかるように、ソフトマターの機能は非平衡状態でより効果的に発揮されるものであり、そこでは構成要素の運動をマクロな動的構造にするために、強くかつ柔軟な要素間相互作用が重要な役割を果たしている。ミクロからマクロへの運動変換過程の解明は、分子集合系の非平衡構造の理解に繋がるだけでなく、生命現象の機構解明や高効率分子素子の実現にもヒントを与えるものとなる。我々は、分子とマクロ構造の関係がより直接的に顕れる二次元液晶を対象に、個々の分子運動に与えられた摂動が液晶としての散逸構造に発展する例を見出してきた。現象自体の明確さとは裏腹に、ミクロ―マクロ運動の変換過程は全くわかっておらず、その解明を果たすことで上記の一般系での課題にも答えを出すことを研究の目的とする。

【成果報告書】 最終  平成21年度  平成20年度  平成19年度  平成18年度

ソフトマター粘弾性場からの結晶化における非平衡構造形成
[ 研究代表者 ] [ 研究分担者 ] [ 研究分担者 ] [ 研究分担者 ]
戸田昭彦
広島大学
大学院総合科学研究科
教授
田中晋平
広島大学
大学院総合科学研究科
准教授
山崎義弘
早稲田大学
理工学術院
准教授
田口 健
広島大学
大学院総合科学研究科
准教授

研究内容

高機能・高性能化が要求されるソフトマター材料の構造制御には、結晶化機構の理解が重要である。ソフトマターの結晶化では、ソフトマター自身のつくる粘弾性ネットワーク場により、容易に平衡から遠く離れた系が実現されるため、自励振動、形態不安定性、複雑な時空パターンなど、非線形非平衡系でみられる多彩な時空構造が重要な現象となる。そこで、近年発展の著しい非線形非平衡動力学の立場を機軸とした、ソフトマター結晶化の研究が待たれている状況にある。本研究では、結晶性高分子、有機分子、タンパク質分子を対象物質として、結晶配向や成長速度の自励振動、固液界面不安定性、微結晶分岐の時空パターン、粘弾性時空構造内での結晶化など、粘弾性場に強く支配されたソフトマター結晶化の非線形非平衡動力学に焦点を当てた研究手法をとる。実験手法としては、nmからの空間スケール、μsからの時間スケールで時空構造の観察・制御が可能なシステムを立ち上げ、数理モデリングに基づく統一的な理解と時空構造制御の指針の確立を目指す。

【成果報告書】 最終  平成21年度  平成20年度  平成19年度  平成18年度

ソフトマターにおける構造と輸送の動的結合
[ 研究代表者 ] [ 研究分担者 ] [ 連携研究者 ]
太田隆夫
京都大学
大学院理学研究科
教授
山本 潤
京都大学
大学院理学研究科
教授
高西陽一
京都大学
大学院理学研究科
准教授

研究内容

ソフトマターは内部自由度の運動や輸送によって階層構造を発現するところに最大の特徴がある。本研究課題では、この「運動」と「構造」の動的な結合のメカニズムを、理論・実験の両面から明らかにすることを目的とする。理論的には外場による構造のトポロジー変化を伴う非線形な応答理論を発展させる。同時にその計算機シミュレーションを行い構造変化のキネテックスを調べる。実験的には個別の内部自由度の「運動」を選択的に励起可能な、特定の光・電磁場などの外場を用いる。また、時空間依存の外場(特定の時空間スペクトルを持つ場)を印加することにより、選ばれた自由度のみを選択的に操作し、この外場下における時空間応答を、別の時空間プローブを用いて検出し、運動と構造の動的な結合の本質を明らかにする。理論・実験の共同研究により異なる階層にまたがる非平衡構造形成とその安定性の包括的な理解をめざす。

【成果報告書】 最終  平成21年度  平成20年度  平成19年度  平成18年度

[ 公募研究(2009-2010) ]

非平衡基礎論とジャミング転移研究の融合
[ 研究代表者 ]
佐々真一
東京大学
大学院総合文化研究科
教授

研究内容

個々の要素が相互に邪魔をしあうことによって系全体の運動が停止する現象を総称的に「ジャミング転移」とよぶ。もっとも典型的な現象は、ずり流動下の粉体系において観測され、流動の停止がジャミング転移に相当する。その一方、線形応答理論で記述できない異常な非平衡特性の理解を目指して、新しい普遍的な法則の模索が行われている。この分野を「非平衡基礎論」とよぶ。本研究課題では、このふたつの潮流を融合的に捉える。

【成果報告書】 最終  平成21年度

輸送分子モーターを連結したシステムの一分子観察
[ 研究代表者 ]
富重道雄
東京大学
大学院工学系研究科
准教授

研究内容

分子モータータンパク質は化学エネルギーを利用して自身の構造を変化させることで力学的な仕事を行うアクティブなソフトマターである。本研究は、レールの上を一方向に運動する分子モーターが複数集まって一つの荷物を運ぶシステムを対象とし、全体の挙動を観察すると同時に個々の要素の構造状態を定量的にモニターする方法を確立する。そしてこの手法を用いて個々の分子モーター間の応力と構造変化を通じた協調性の仕組みを明らかにすることを目指す。

【成果報告書】 最終  平成21年度

自己組織性蛋白質と脂質二重膜のダイナミックな相互作用の直接観察と動力学的解析
[ 研究代表者 ] [ 研究分担者 ] [ 研究分担者 ]
瀧口金吾
名古屋大学
大学院理学研究科
助教
木下 専
名古屋大学
大学院理学研究科
教授
梅田民樹
神戸大学
大学院海事科学研究科
准教授

研究内容

細胞や細胞内小器官は生体膜によって外部と区画され機能を維持している。生体膜の基本構造は、内部や直下に様々な蛋白質を集積させた脂質二重膜で、これら膜と蛋白質の2大ソフトマターの特性によって生体膜の物理化学的性質と生理学的役割が規定される。本研究では特に膜結合能と重合能を併せ持つ裏打ち蛋白質と脂質二重膜との間に生じるダイナミックな相互作用に注目し、その結果生じる膜の振舞いをリアルタイム観察することによって生体膜の動態制御機構を明らかにする。

【成果報告書】 最終  平成21年度

ジャミング・ガラス転移の統一理論の構築研究
[ 研究代表者 ]
早川尚男
京都大学
基礎物理学研究所
教授

研究内容

高密度ソフトマターが示す、ジャミング転移・ガラス転移を統一的な理論的研究で理解することを目的とする。既に、通常のガラス転移での場の理論によるモード結合理論の拡張、せん断系において従来のモード結合理論を超える液体論としてのモード結合理論、臨界現象としての接線摩擦のない粉体系のジャミング転移と相関関数における第1ピークの発散や粘性率の発散が明らかになりつつあり、更にその研究を推進して統一的描像を明らかにしたい。

【成果報告書】 最終  平成21年度

コンピュータ支援光照射法を用いた高分子混合系の定常非一様な相分離挙動に関する研究
[ 研究代表者 ] [ 研究分担者 ]
宮田貴章
京都工芸繊維大学
大学院工芸科学研究科
教授
則末智久
京都工芸繊維大学
大学院工芸科学研究科
准教授

研究内容

本研究では、コンピュータ支援光照射(Computer-Assisted Irradiation)法を用い、コンピュータで様々な空間の対称性や時間のリズムを有する光のパターンをデザインし、デジタルプロジェクターを通して、顕微鏡下に設置した高分子混合系に照射して、相分離を引き起こす。このようにして、光反応を用い、高分子混合系の熱力学的に定常非平衡条件下における相分離挙動を計測・解析を行う予定である。

【成果報告書】 最終  平成21年度

単一高分子鎖の非平衡ダイナミクスと粘弾性計測
[ 研究代表者 ]
影島賢巳
東京学芸大学
教育学部
准教授

研究内容

高分子の粘弾性応答を単一分子レベルで計測するための実験的研究手法を開発するとともに、粘弾性を単一分子鎖の構造的視点から捉える議論の確立を目指す。独自に開発した、原子間力顕微鏡(AFM)の探針に1MHzまでの広帯域で力学変調を印加する手法を用いて、探針に捕捉された単一の高分子鎖の粘弾性応答を計測する。分子鎖に張力を印加して引き起こされた構造相転移と粘弾性の相関を探る。

【成果報告書】 最終  平成21年度

生体ソフトマターの非平衡力学計測
[ 研究代表者 ]
水野大介
九州大学
高等研究機構
特任准教授(SSP)

研究内容

強い非平衡環境下におかれた生体物質(ソフトマター)は、周囲の媒質や自分自身の非平衡度に依存してその性質を大きく変化させる。本研究ではその詳細なメカニズムを解明するために、試料の非平衡度や力学的性質を制御しかつ計測できる新しい非平衡力学物性計測システムを開発する。さらに開発したシステムを用いて、自発的に力生成する細胞骨格(アクチン・ミオシン・ATPからなる非平衡ゲル)の非平衡物性(力生成および力学的性質)が、外部からの力学刺激(ずり場)に対していかに応答するか系統的に観測する。

【成果報告書】 最終  平成21年度

液晶場に分散した棒状コロイド粒子の秩序化とダイナミクス
[ 研究代表者 ]
松山明彦
九州工業大学
大学院情報工学研究院
准教授

研究内容

カーボンナノチューブのような長い棒状コロイド粒子は,様々なユニークな構造や力学的電気的特徴のため,ナノセンサーやディスプレィなど様々な応用分野の新しい材料として注目されている。この材料設計において1つの重要なことは長い棒状コロイド粒子を並べることである。その方法として低分子液晶がつくる配向場を利用することが考えられる。本研究は,平衡・非平衡の統計力学的理論と計算機シミュレーションを用いて,液晶分子と長い棒状コロイド粒子の混合系でおこる,相構造や相分離,電場や磁場などの外場による配向秩序と相分離の制御,液晶分子と棒状コロイド粒子の2つの異なる配向秩序パラメーターが競合しておこる相分離ダイナミクスを明らかにする。相分離を利用した材料設計と,液晶場に分散した棒状コロイド粒子の構造形成とダイナミクスに関しての基礎物性の解明を目的とする。

【成果報告書】 最終  平成21年度

ガラス形成物質における非平衡緩和機構の解明
[ 研究代表者 ] [ 研究分担者 ]
深尾浩次
立命館大学
理工学部
教授
中村健二
立命館大学
理工学部
助教

研究内容

高分子、スピングラスをはじめとした多くの乱れた系で観測されるエイジング現象、ガラス転移は、乱れた系一般に存在する普遍的な現象であることが期待されている。本研究ではソフトマターの代表である高分子ガラスに着目し、そのエイジング過程、ガラス転移近傍で観測される非平衡緩和機構を誘電緩和測定、温度変調 DSC法などのダイナミックス測定法を駆使することにより明らかにする。

【成果報告書】 最終  平成21年度

外場が誘起する脂質二重膜の非平衡相分離挙動の解明
[ 研究代表者 ]
手老龍吾
豊橋技術科学大学エレク
トロニクス先端融合研究所
特任助教

研究内容

細胞膜の主成分である脂質二重膜の相分離は生体反応における分子の集合・離散を担う要因の1つである。本研究では、外場によって誘起される脂質二重膜の非平衡かつ動的な相分離挙動の観察とその要因の解明を目指す。スフィンゴ脂質とコレステロールを主成分とする脂質二重膜において固体表面力場や光照射の影響によって現れるメゾスコピック相分離の構造観察と物性計測を蛍光顕微鏡と原子間力顕微鏡を用いてin-situで行う。

【成果報告書】 最終  平成21年度